突撃の栄光ではなく、戦場を離れる兵士の重い歩みを描く。
何が描かれているか
胸に金属の鎧を着けた兵士が、馬から下りて坂を進む。手綱を持ち、背後を気にして振り返るが、馬も足場の悪い斜面で慎重に歩いている。題名は兵士が負傷して戦闘から離れることを伝える。画面には勝利を祝う人々も、分かりやすい敵の姿もない。二人だけが大きな空の下に置かれ、退くという行動そのものが主題になる。
作品の見どころ
騎兵と馬は画面の右に寄り、左には雲の広がる空間が残る。馬の脚と兵士の足は異なる向きに動き、斜面を下る難しさが見える。金属の胸甲に当たる光は目立つが、姿勢は安定しない。《突撃する近衛騎兵士官》の上へ伸びる動きと比べると、こちらでは重さやためらいが強い。同じ軍装を描いても、感情は一つではない。
制作背景
ルーヴル美術館は1814年の作品として登録し、同年のサロン出品を記録する。ナポレオンの退位前後の時代に描かれたが、特定の戦いの敗北を直接記録したと断言はできない。作品の題名に沿って、兵士が戦場から離れる姿を見よう。後に《メデューズ号の筏》で取り組む、英雄だけを中心にしない歴史画へつながる関心もうかがえる。
出典・画像について
画像:Théodore Géricault《負傷した胸甲騎兵》/Wikimedia Commons / Public Domain Mark
CommonsのPublic Domain Mark / PD-Art表示に基づく忠実な複製。複製写真と所蔵館規程は法域で扱いが異なる可能性があります。
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この画家について本で読む
ジェリコー
中原たか穂 著 / KADOKAWA
画家ジェリコーと《メデューズ号の筏》の制作を描いた漫画。史実を確認する際は所蔵館の資料も参照できます。
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