1820~1824年頃
32歳頃

窃盗への執着を示す人物の肖像

画家 テオドール・ジェリコー →
Portrait of a Kleptomaniac / ヘント美術館
過去の医学用語で呼ばれる肖像を、人物の尊厳にも注意して見る。

何が描かれているか

暗い上着の男性が半身で座り、少し横を見つめる。髪や頬には細かな筆づかいが残り、背景はほとんど説明されない。題名は当時の「窃盗への偏執」という分類に由来する。しかし、顔だけから行動や病気を読み取ることはできない。人物を分類の例としてのみ見るのではなく、目線や体の向き、画家が与えた近い距離に注目したい。

作品の見どころ

顔の片側に当たる光が頬と鼻の形を見せ、黒い服は背景にゆっくり溶け込む。細い筆触を残した部分と大きく塗った部分の違いが、見る位置を変える。肩は画面の外へ続き、人物が小さな枠に閉じ込められた印象は弱い。同じ時期の女性肖像と比べても、共通するのは病名ではなく、一人ずつの顔と姿勢を丁寧に見る方法である。

制作背景

ヘント美術館は1820~1824年頃の作とし、かつて精神医療に関わる人々を描いた肖像群の一枚と説明する。同館によれば、十点の連作れんさくのうち五点が現在残る。当時の医師は顔つきから精神状態を読み取ろうとしたが、その考えを現代の事実として受け入れるべきではない。所蔵館もこの絵に、単なる医学標本を超える人物への共感を見る。

作品情報

材質・技法
カンヴァスに油彩ゆさい
所蔵
ヘント美術館(1908-F)

出典・画像について

出典:ヘント美術館 作品記録(2026-09-26 確認)
画像:Théodore Géricault《窃盗への執着を示す人物の肖像》/Wikimedia Commons
画像の出典 / CC0 1.0(画像情報:2026-09-26 確認)
提供元のCC0 / Open Access 表示に基づき掲載。
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この画家について本で読む

ジェリコー
中原たか穂 著 / KADOKAWA
画家ジェリコーと《メデューズ号の筏》の制作を描いた漫画。史実を確認する際は所蔵館の資料も参照できます。
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