何が描かれているか
聖母マリアが地面にひざまずき、石の飼い葉桶の前に置かれた幼子キリストへ祈る。聖ヨセフは少し後ろに座り、右から三人の羊飼いが顔を寄せて礼拝する。
飼い葉桶は古代ローマの石棺を再利用した形で、背後には崩れた建築と凱旋門が立つ。遠い道を東方三博士の一行が進み、町と山まで細かな風景が続く。
作品の見どころ
幼子の誕生を新しい時代の始まりとして、壊れた古代建築の前へ置く。石棺は死を思わせる器でもあり、誕生の喜びに将来の受難と復活を重ねている。
羊飼いの顔は理想化せず、日焼けや年齢の違いを細かく描く。画家自身とされる羊飼いもこちらを指さすが、自画像の同定は伝承を含むため、可能性として見る。
制作背景
1485年、フランチェスコ・サセッティの礼拝堂祭壇のために制作された。周囲の壁画は聖フランチェスコ伝で、板絵はその中心に置かれ、注文者一族の墓と向き合った。
古代の石棺に刻まれた文字や建築は、異教世界からキリスト教世界への移行を示す。北方絵画を思わせる羊飼いの写実と、フィレンツェの遠近法を一画面へ組み合わせた。