何が描かれているか
豪華な寝室で聖アンナが寝台に身体を起こし、生まれたばかりの聖母マリアが手前で産湯を使う。女性たちは布や水を運び、右から格式ある衣装の訪問者たちが入室する。
階段、柱、浮彫、格子天井が広い邸宅をつくり、左上にはアンナと夫ヨアキムが出会う以前の場面も小さく置かれる。聖書外伝の物語がフィレンツェの生活へ移されている。
作品の見どころ
出産という私的な場面を、都市の有力者を迎える公式の訪問のように整えた。産湯の忙しい動きと、静かに歩く女性の列が同じ部屋で異なる速さをつくる。
建築の水平線と階段が人物を奥行きごとに分ける。衣服、髪型、家具を同時代風に描くため、遠い宗教史が注文者の家族史と現在のフィレンツェへつながる。
制作背景
サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂の公式記録によれば、ジョヴァンニ・トルナブオーニが1485年に主礼拝堂の権利を得て、ギルランダイオへ壁画を注文した。制作は1486〜1490年に進んだ。
礼拝堂左壁には聖母の生涯、右壁には洗礼者聖ヨハネの生涯が描かれる。大規模な連作は弟や助手を含む工房制作であり、全ての細部をギルランダイオ単独の筆とは扱わない。