何が描かれているか
黒い帽子と赤い上着を着た若い男性が、身体を少し斜めにしながら顔をこちらへ向ける。暗い背景には家具や風景を置かず、白い襟、肌、赤い布だけが浮かぶ。
人物は胸の下まで描かれ、手や身分を示す品は見えない。わずかに閉じた口とまっすぐな目線が、名前の分からない若者の姿を近い距離で保っている。
作品の見どころ
横顔だけを見せる従来の肖像より顔の面積が広く、左右の目、鼻、口の関係を読み取りやすい。四分の三面像によって、記念メダルのような型から対面する人物へ近づいた。
背景を暗くしたため、帽子の輪郭は一部が溶け、顔と赤い衣が前へ出る。装飾品で地位を語るより、肌の陰影と視線から個人の存在を感じさせる。
制作背景
ナショナル・ギャラリーは1480〜1490年頃のギルランダイオ作として所蔵する。人物の名前は分かっておらず、題名は服の色と年齢の印象を示す記述的なものにとどまる。
ルネサンス肖像では個人の外見だけでなく、地位や徳を示すことも重視された。本作は持ち物を減らし、四分の三面の顔そのものへ注意を集める点に特徴がある。