ユダの外套がキリストの身体を包み、二人の距離を急に狭める。顔と顔の間だけに小さな余白が残るため、群衆の騒音の中でも、裏切る者と受け入れる者の視線が強く感じられる。
何が描かれているか
黄色い外套のユダがキリストへ近づき、接吻によって捕える相手を兵士に知らせる。二人の顔は画面中央で向き合い、兜、槍、松明、棒を持つ群衆が周囲を埋める。
左ではペトロが剣で男の耳を切り、右では祭司が腕を伸ばす。複数の出来事が同時に起こるが、ユダの大きな黄色とキリストの静かな顔が中心を明確にする。
作品の見どころ
ユダの外套がキリストの身体を包み、二人の距離を急に狭める。顔と顔の間だけに小さな余白が残るため、群衆の騒音の中でも、裏切る者と受け入れる者の視線が強く感じられる。
槍や棒は上空で斜めに交差し、押し寄せる人々の圧力をつくる。一方、キリストの横顔はほぼ垂直に保たれる。周囲の混乱と中心の静けさを比べると場面の緊張が見える。
制作背景
スクロヴェーニ礼拝堂のキリスト受難伝の一場面で、1303〜1305年頃に描かれた。礼拝堂では壁に沿って物語を順に追えるため、一場面ごとの動きと次の場面へのつながりが重要だった。
聖書の登場人物を識別するだけでなく、接近、視線、密集という人間の行動で裏切りを表す。宗教物語を現実の身体が衝突する出来事として見せることが、ジョットの革新の一つである。