何が描かれているか
黒いドレスとベールを着けた女性が、風景の中に全身を見せて立つ。腰には赤い帯があり、片手を腰の近くへ置き、もう一方の手で地面を指している。人物の姿は、広い空と地面からくっきり区切られる。
モデルは第13代アルバ公爵夫人マリア・デル・ピラール・テレサ・カイエターナである。共同研究は、夫を亡くした時期の黒衣と、マハと呼ばれるスペインの装いとの関わりを説明している。
作品の見どころ
黒い衣の大きな面に、赤い帯と明るい肌がアクセントをつくる。宮廷の集団を描いた《カルロス4世の家族》と比べると、一人の立ち姿、衣服、指先の動きに視線が集まることが分かる。
足元の「Solo Goya」の文字や、指輪の名については、共同研究の記載を参照している。掲載画像では細字に拡大の限界があるため、画面からすべての文字が読めるとは案内しない。
制作背景
1797年の油彩画で、現在はニューヨークのヒスパニック・ソサエティにある。ゴヤは1796〜1797年に公爵夫人の滞在先サンルーカルを訪れた。肖像の背景とモデルの身振りは、その交友を考える材料になる。
一方、二人が恋愛関係にあったかは確定していない。文字や指輪を、そのまま恋人であった証明とすることは避ける。モデルとの関係を留保しながら、人物の存在感をつくる肖像の技法を見る。