何が描かれているか
暗い空間に十字架とキリストの身体が浮かぶ。頭を上へ向け、両腕を左右へ伸ばし、白い腰布を着けている。足元まで見せる縦長の構図には、周囲の群衆や物語の舞台が描かれない。
画面の中心になるのは、明るい肌と、その外側の暗さである。腕から胸、腹、脚へとつながる身体の形を、見る人が順に追える。悲劇の出来事を描きながら、流血の激しさより身体のまとまりが目に入る。
作品の見どころ
既存の《サトゥルヌス》と比べると、同じ身体の主題でも、輪郭や光の置き方は大きく違う。この一枚を加えることで、ゴヤを晩年の恐ろしい絵だけで理解せず、宗教画と人体表現の学習から見ることができる。
プラド美術館は、17世紀スペインの宗教画の伝統と、メングスやバイユーに通じる古典的な美の影響を指摘する。これらは館の解釈であり、ゴヤのすべての宗教画が同じ様式だという意味ではない。
制作背景
ゴヤは1780年、この作品をサン・フェルナンド王立美術アカデミーに提出し、正会員として認められた。現存する初期の宗教画を通して、公的な評価を得ようとする画家の仕事を見る。
油彩でカンヴァスに描かれた作品で、現在はプラド美術館にある。戦争の版画や私的な幻想画へ進む前に、注文や制度の中で磨いた、整った人体の表現も押さえておきたい。