画面下の斜めの暗い色面から犬の頭だけが現れ、上方の広い黄土色の空間を見上げている。何もないように見える部分の大きさが、犬の小ささを強める。ただし、犬が本当に水へ沈んでいる場面とは確定できない。
何が描かれているか
犬の頭は画面の下方に小さく置かれ、鼻先と目が左上へ向く。身体は見えず、下部を斜めに横切る暗い面の向こうに隠れる。
画面の大半は黄土色と灰色の広い面で占められ、人物、建物、物語を説明する道具はない。
作品の見どころ
主役を大きく描く代わりに、周囲の空白で存在の弱さを感じさせる。後世の題名を知ると溺れる犬を想像しやすいが、損傷や壁画からの移し替えで要素が失われた可能性もある。
題名から場面を完成させず、見える頭、斜面、広い色面から考えたい。小さな頭から視線の先へ進み、何も描かれていないように見える広い上部を眺めると、余白が主役と同じほど重要だと分かる。場面の答えを補うより、情報の少なさが生む不安をそのまま受け取りたい。
制作背景
1820–1823年頃、漆喰壁へ油彩で描かれ、後にカンヴァスへ移された《黒い絵》の一つである。
現在は131×79センチで、プラド美術館が目録番号P00767として所蔵する。現在の縦長画面だけを、制作当初から完全に同じ状態だったとはみなさない。