何が描かれているか
長い白いひげの老人が、二本の杖を支えに立つ。大きな衣をまとい、顔を少し横へ向けている。右上に「Aun aprendo」と54の文字があり、言葉と人物を一緒に読む素描である。
題名は「まだ学ぶ」という意味で、日本語では「まだ学ぶぞ」などと訳される。老人の弱った身体と、学び続けることを示す言葉が並ぶ。衰えだけでなく、続ける姿を考えさせる。
作品の見どころ
紙の灰色と、黒い線、白く見えるひげの対比に注目したい。線は身体の形を探るように重なり、油彩の色面や版画の刷りとは違う、直接紙に描く仕事の感触が伝わる。
掲載画像には紙の縁と、下の方の傷みも残っている。傷みを人物の姿や作者が描いた模様として説明しない。保存状態を含む一枚の紙として、見える線を確かめたい。
制作背景
プラド美術館は1826年頃、黒鉛筆と石版用鉛筆による素描と記載する。石版用の鉛筆を使っていても、この一枚は石版画の刷りではない。ゴヤ財団は制作年を1824〜1828年頃と広く捉える。
老人はゴヤの象徴的な自画像として読まれてきたが、実際の顔を写した肖像だとは確定しない。晩年の《スペインの娯楽》とともに、歳を重ねた画家の試行と、後世の解釈を分けて見る手がかりになる。