何が描かれているか
机に伏せた男の背後へ、鳥やコウモリのような生き物が集まる。手前には目を開いた動物もいる。眠る身体の重さと、空中で増えていく翼の形が対照をなしている。
これは版画集『ロス・カプリーチョス』の第43図である。机の正面には作品名の文字が入り、絵と言葉を一緒に読むつくりになっている。掲載する紙はメトロポリタン美術館の所蔵品である。
作品の見どころ
黒い線だけでなく、粒のある灰色の面が、身体の影や夜の空間をつくる。館が記載するアクアティントは、こうした調子を出す版画技法である。油彩の色を使わず、明暗で不安を広げている。
生き物をどの位置まで数えられるか、伏せた男の周囲から外側へ見てみたい。暗い群れの中にも一体ずつ形がある。恐ろしい印象を与えると同時に、眠りと想像力を考えさせる図として読める。
制作背景
80図からなる『ロス・カプリーチョス』は1799年に刊行された。メトロポリタン美術館によれば、この図は構想の段階では巻頭に置く予定だったが、刊行版では第43図となった。
同館は、理性が働かないときに恐ろしいものが生まれる、という読みを示す。ただの悪夢の挿絵と決めつけず、人間の考え方や社会を見る版画集の一部として理解したい。