何が描かれているか
闘牛場の中央に、牛と倒れた人物、その周囲へ動く人々が描かれる。観客席は遠くに広がるが、近くの身体と動物の動きが場面の緊張をつくる。題名は、闘牛士ペペ・イーリョの死を示している。
版画集『ラ・タウロマキア(闘牛技)』の第33図で、紙の右上にも33の番号がある。掲載する紙はメトロポリタン美術館所蔵のもので、東京の国立西洋美術館にある紙とは別の刷りである。
作品の見どころ
明るく残した闘牛場と、重く暗い身体の群れを見比べたい。動物の勢いに対し、人々は近づいたり身を引いたりする。闘牛を単なる華やかな見世物として描かず、身体が危険にさらされる瞬間を示す。
同じ画家の《戦争の惨禍》とも、動きや危険の表現を比較できる。ただし、戦争と闘牛を同じ事件として扱うのではなく、異なる主題を、線と明暗によってどう迫力ある場面にしたかを見る。
制作背景
この版画集は1816年、33図の組として発売されたことを国立西洋美術館が説明する。刊行された作品として、絵画の注文仕事とは異なる、紙を通して見る人へ届ける仕事が分かる。
メトロポリタン美術館はエッチング、アクアティント、ドライポイント、ビュランの使用を記載する。版に線や面をつくる複数の方法を組み合わせた点にも注目したい。題名から、ゴヤ自身がその死を目撃したとは断言しない。