何が描かれているか
椅子に座った女性が、こちらへ落ち着いた視線を向ける。黒い服と大きな白い襟を着け、片手には小さな本を持つ。画中の記載から1633年に60歳だったと分かるが、名前は伝わっていない。ワシントン・ナショナル・ギャラリーは本を聖書または祈祷書の可能性があるとする。家柄や信仰を想像する手がかりはあっても、一つの身元に決めつけられない。
作品の見どころ
まず顔を見てから、白い襟の折り目、袖のレース、黒い布へ視線を移したい。色を抑えた衣服の中に、布の違いや装飾の丁寧さが現れる。人物は笑ってはいないが、まっすぐな視線と自然な座り方から、かたくるしさだけではない存在感が生まれる。陽気な人物画と比べると、同じ画家が表情の幅を使い分けていたことが分かる。
制作背景
所蔵館は1633年の肖像として記録する。17世紀オランダの肖像画は、本人や家族が社会的な立場と記憶を残すために注文することが多かった。ハルスはこの女性を、豪華さを誇張するより、顔と身振りに重心を置いて描いた。名前が失われても、年齢の記載と丁寧な衣の表現が、当時の一人の人物を今へ伝えている。
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この画家について本で読む
レンブラントとフェルメール オランダ絵画「光と影」の巨匠たち
岡部昌幸 著 / KADOKAWA
17世紀オランダ絵画を扱う本。第3部にフランス・ハルスの章があり、同時代の画家とあわせて知ることができます。
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