何が描かれているか
黒い帽子と服を着た若い男性が、椅子の背に腕を掛けてこちらを見る。片側へ少し体を回し、かしこまって立つ公式肖像とは違う近さがある。ワシントン・ナショナル・ギャラリーは、描かれた人の名前を特定していない。服装や椅子は当時の社会的な姿を示す一方、何より印象に残るのは、ふとこちらへ向けられたような顔である。
作品の見どころ
椅子の背を画面の手前に置き、その向こうから人物がこちらへ目を向ける。腕の曲線と肩の向きが、静かな絵に動きを与える。黒い服でも輪郭や光には変化があり、白い襟が顔の位置をはっきりさせる。細かく整った部分と自由な筆の跡を見比べると、ハルスが相手の姿を生き生きと保とうとしたことが感じられる。
制作背景
所蔵館は制作を1646~1648年頃とする。ハルスの肖像には、顔だけを似せる以上に、その人がそこにいる感覚を伝える工夫がある。身元が分からなくても、椅子を使った自然な姿勢と視線が見る人との出会いを作る。初期の陽気な人物画とは違う落ち着きの中に、長く磨いた表情の描写が生きている。
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この画家について本で読む
レンブラントとフェルメール オランダ絵画「光と影」の巨匠たち
岡部昌幸 著 / KADOKAWA
17世紀オランダ絵画を扱う本。第3部にフランス・ハルスの章があり、同時代の画家とあわせて知ることができます。
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