何が描かれているか
デンマーク王女でミラノ公爵未亡人のクリスティーナが、青緑の背景の前に全身で立つ。黒い喪服と帽子を着け、白い襟と袖口、赤い手袋だけが小さく明るい。
身体はわずかに斜めを向き、両手を腰の前で重ねる。長い黒い衣が床まで一つの形として落ち、顔と手の距離を大きく広げている。
作品の見どころ
黒い喪服を大きな形として見せ、顔と手だけに小さな明るさを集める。結婚交渉のための記録が、余白と全身の輪郭によって強い人物像になった。
背景には宮殿も家具もない。床と壁の境だけが場所を示すため、鑑賞者は身長、姿勢、手袋、表情を直接比較できる。情報を減らすことが存在感を強めている。
制作背景
1538年、ヘンリー8世は次の結婚候補を探し、宮廷画家ホルバインをブリュッセルへ派遣した。記録によれば、画家がクリスティーナと対面して素描する時間は約3時間だった。
ナショナル・ギャラリーは作品に署名はないものの、ホルバイン作であることは広く認められていると説明する。結婚は成立しなかったが、肖像は交渉のための像を超えて残った。