何が描かれているか
キリストの遺体が、石の墓を思わせる細長い空間に横たわる。頭は右を向き、口と目がわずかに開き、手足には磔刑の傷が残る。
背景や他の人物はほとんどなく、身体が画面の端から端まで伸びる。足元の壁には石を刻んだように見える年記と、ホルバインの頭文字が描かれる。
作品の見どころ
細長い枠が墓の狭さを身体へ押しつける。理想化を避けた傷、手、目、口が、死を抽象的な記号にせず、時間を経た身体として見せる。
ほぼ横一線に置かれた身体に対し、胸、腰、膝、足先には小さな高低差がある。顔だけでなく、指と足の変色まで見ると、観察の厳しさが全身へ及んでいる。
制作背景
バーゼル市立美術館は1521〜1522年の制作として扱う。赤外線調査とX線撮影により、年記は当初1522だったが、制作中に最後の数字が消され1521へ直されたことが分かった。
同館は、依頼主がボニファキウス・アーメルバッハだった可能性を示すが、確定とはしていない。元の用途も含め、不明点を残したまま作品の特殊な形式を見る必要がある。