何が描かれているか
人文主義者デジデリウス・エラスムスが、黒い帽子と毛皮の衣を着て斜めを向く。両手は赤い革表紙の本に置かれ、ほどかれた緑のひもが垂れる。
背後には緑の幕、古典建築風の柱、本、容器が並ぶ。本の小口と棚の本にはラテン語とギリシャ語の銘があり、人物と画家の名声をたたえる。
作品の見どころ
赤い本と二つの言語の銘が、人物の仕事を顔と同じくらい語る。肖像が知識と評判を運ぶ道具になり、手を本へ置く小さな動きが学者の活動を見せる。
黒い帽子と毛皮は頭を囲み、左からの光が額、頬、手へ移る。疲れを感じさせる目元と固い輪郭を一緒に見ると、理想化だけではない人物像になる。
制作背景
ナショナル・ギャラリーは1523年、木の板に油彩として記録する。バーゼルで描かれ、翌年エラスムスからカンタベリー大主教ウィリアム・ウォラムへ贈られた。
エラスムスは1526年にイングランドへ向かうホルバインへ推薦状を与えた。肖像は贈り物として人物の姿を運ぶだけでなく、画家の技量を外国の有力者へ知らせる役割も果たした。