何が描かれているか
黒い帽子のギーゼが机の前に立ち、一通の手紙を手にする。壁に留めた手紙、棚の印章、秤、鍵、卓上の時計とガラス花瓶が室内を満たす。
小さな品は単なる飾りではない。手紙や道具が仕事場を示し、手の位置と顔の向きが、その場にいる人物へ視線を戻す。
作品の見どころ
紙の薄さ、金属の光、布の模様、ガラスの透け方が一つずつ描き分けられる。細部の精度を楽しみながら、全体が落ち着いた肖像にまとまる点を見たい。
花の色と袖の赤が暗い服の中に小さなアクセントを作る。物を増やして人物の重要さを誇張するより、物に囲まれた彼の働く場を具体化する。
制作背景
ベルリン絵画館は1532年の作品とし、ギーゼをロンドンのハンザ商人の拠点で働いた人物として説明する。ホルバインの二度目のイングランド滞在初期にあたる。
同館は、この商人肖像が同時期の類例より大きく入念であると記す。王室に近づく前後の画家が、仕事をする個人をどう見せたかが分かる。 手紙や秤が具体的な仕事を示し、王侯ではない依頼主を同じ密度で描いたことが分かる。
アフィリエイトリンク|このリンクから購入されると、運営者に報酬が入ることがあります。
この画家について本で読む
西洋美術の歴史5 ルネサンスII 北方の覚醒、自意識と自然表現
秋山 聰・小佐野 重利・北澤 洋子・小池 寿子・小林 典子 著 / 中央公論新社
ドイツやネーデルラントなどアルプス以北のルネサンスを扱い、ホルバインの宮廷肖像も時代の中で読める美術史です。
楽天ブックスで見る →