1532〜1535年
30代半ば

学者または聖職者の肖像(素描そびょう)

画家 ハンス・ホルバイン(子) →
Portrait of a Scholar or Cleric / J・ポール・ゲティ美術館
顔の輪郭りんかくは明確なのに、肩や衣はまだ薄い線のまま残る。完成した油彩ゆさい肖像とは違い、画家がどこへ観察を集中したかを、線の密度から見られる。

何が描かれているか

幅のある帽子をかぶった男性が、画面右へ顔を向ける。鼻、目元、口の線は細かく描かれる一方、肩から下の衣は淡い線で示され、紙の地が広く残っている。
題名は《学者または聖職者の肖像》。特定の人物名を断定するものではない。帽子と衣が人物の役割を考える手がかりになるが、名前が分からないまま、顔と線の描き方を見ることができる。

作品の見どころ

目の縁、鼻の先、口元を順に追うと、短い線や薄い陰影の重なりが分かる。衣のように輪郭だけを残す部分と比べることで、同じ紙の上でも描き込みの密度が異なることが見えてくる。
素描とは、線や濃淡を中心に形を描く仕事のこと。ここでは顔の存在感と、仕上げを省いた衣が同居している。未完成と呼んで終えるより、少ない線でどこまで人物が伝わるかを見たい。

制作背景

ゲティ美術館の展覧会目録は1532〜1535年の制作と記録する。黒と赤のチョークに、ペンや筆による黒インクを併用し、ピンク色に下塗りした紙へ描いた。紙の寸法は縦21.9cm、横18.5cmである。
油彩の肖像画だけでは見えにくい、紙の上の観察を紹介するために加えた。ゲティの目録は学者または聖職者という題名を使っており、ここでも人物名や職業を一つに絞らず、その留保を残している。

作品情報

材質・技法
黒・赤チョーク、ペン・筆と黒インク、ピンク色に下塗りした紙
所蔵
J・ポール・ゲティ美術館
目録番号
84.GG.93
位置づけ
顔を細かく描き、衣や肩を少ない線で示した肖像素描。人物名を確定していない作品。
紙の寸法
21.9 × 18.5 cm(高さ × 幅)
人物の同定
人物名と職業を確定せず、学者または聖職者として紹介。

出典・画像について

画像:Hans Holbein the Younger《学者または聖職者の肖像(素描)》/学者または聖職者の肖像(素描) — Hans Holbein the Younger / J. Paul Getty Museum / Wikimedia Commons
画像の出典 / Public Domain Mark 1.0(画像情報:2026-10-07 確認)
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