何が描かれているか
水の中の人物が頭を上へ向け、その上に果実を付けた木の枝が広がる。枝の周囲には文字のある帯が曲がっている。掲載画像は、この円形の図案を額に収めた状態を写している。
ギリシャ神話のタンタロスは、目の前の水を飲めず、頭上の果実も食べられない罰を受ける人物である。水と木は単なる背景ではなく、近いのに得られないものとして人物を取り囲む。
作品の見どころ
顔の向きから果実へ、そこから口元の水へ視線を戻してみたい。円の中で欲しいものと身体の距離が小さくまとまり、大きな画面を使わずに物語を読ませている。
所蔵館が記録する図案の直径は5.1cmで、写真全体や額の大きさではない。拡大表示で線を見たあと、指先に近い尺度で描かれた作品だったことを思い返すと、細部の小ささが分かる。
制作背景
ナショナル・ギャラリー・オブ・アートは1535〜1540年頃の制作とし、ペンと黒インクに水彩と金を加えた紙の作品として所蔵する。簀目紙とは、紙をすく道具の細かな線の跡が残る紙のこと。
ゲティの展覧会解説は、帽子の飾りやメダリオンのための図案と説明する。メダリオンは円形の飾りを指す。完成した金属製品を写した画像ではなく、職人へ色や構成を伝えるために紙へ描いた仕事として見たい。