1816年
35〜36歳頃

バダム夫人の肖像

画家 アングル →
Mrs. Charles Badham / ナショナル・ギャラリー・オブ・アート(ワシントン)
顔は丁寧な陰影、衣装は軽い線。描き込みの違いが、一人の女性を紙の上に浮かび上がらせる。

何が描かれているか

帽子をかぶった女性が椅子に座り、体を横へ向けながら顔をこちらに向けている。肩から腕を覆う布には模様や房飾りが描かれ、両手はひざの上に置かれている。背後には、建物や細長い記念碑が薄い線で見える。
顔と首には細かな陰影があり、目元や口元を追いやすい。一方、衣服には何本もの線が走り、紙の明るさが広く残る。人物の全てを同じ濃さで埋めず、描き込みの差によって顔へ目を導いている。

作品の見どころ

鉛筆の線だけでも、布の重なりや椅子の形を感じ取れる。輪郭りんかくを一本ずつたどるより、濃い髪から薄い肩、さらに遠景へと目を動かすと、線の強さの変化が分かりやすい。
背景の建築は、女性の顔ほど詳しく描かれていない。その軽さによって、前にいる人と後ろの景色の間に距離が生まれる。色彩の豊かな油彩ゆさい肖像とは違う方法で、人の存在感を示している。

制作背景

所蔵館は1816年の黒鉛による素描そびょうと記録する。黒鉛は鉛筆の芯に使う素材で、紙に線や陰影を描く。左下の署名にはローマと1816年の文字がある。
完成した油彩の準備としてだけでなく、この紙の作品そのものを見たい。顔、衣装、背景をどこまで描くかという選び方に、アングルの肖像の作り方が現れている。

作品情報

材質・技法
黒鉛・織り目のない紙
所蔵
ナショナル・ギャラリー・オブ・アート(ワシントン)
目録番号
1991.217.20
位置づけ
顔と衣装の描き方を比較できる鉛筆の肖像

出典・画像について

画像:Jean-Auguste-Dominique Ingres《バダム夫人の肖像》/バダム夫人の肖像 — Jean-Auguste-Dominique Ingres / Courtesy National Gallery of Art, Washington
画像の出典 / CC0 1.0(画像情報:2026-10-08 確認)
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