何が描かれているか
三人の少女がピアノのそばに集まっている。手前に座る一人、その後ろに立つ一人、右から楽器へ腕を伸ばす一人。顔の高さと体の向きが少しずつ違い、三人を一列に並べるだけの肖像にはなっていない。
描かれたのは、ローマ駐在のオーストリア大使カウニッツ=リートベルクの娘たちだ。所蔵館は、姉妹が13〜17歳の時の姿と説明する。巻いた髪や襟の飾りが、それぞれの顔を囲んでいる。
作品の見どころ
まず顔の位置を結んでから、腕や服の輪郭を追ってみたい。前後に重なる体と椅子、右のピアノが、少ない線で部屋の中の位置関係を示す。紙に残る空白も、人と人の間の距離に見えてくる。
顔は丁寧に描かれる一方、服や楽器は軽い線が中心だ。白黒の素描でも、濃く描いた髪や目元へ自然に視線が集まる。三人の顔を見比べながら、線の強さの違いにも注目したい。
制作背景
1818年に黒鉛で描かれた作品である。黒鉛は鉛筆の芯に使う素材だ。所蔵館は、背景が一家の音楽室である可能性を挙げるが、場所を確定してはいない。
一人を描いた《バダム夫人の肖像》と比べると、人物が増えた時に空間の組み立て方がどう変わるか分かりやすい。鉛筆の肖像にも、顔を写すだけではない構成の工夫がある。