何が描かれているか
黒いドレスを着た女性が椅子に座り、こちらを見ている。一方の腕は背もたれに置かれ、もう一方の手は画面の右下へ伸びる。暗い服の中で、顔と手の明るさが目を引く。
胸元には長い金色の鎖が掛かり、左下には赤や黄、白の模様が入った布が広がる。右側には小さな丸い卓が見える。人物の輪郭だけでなく、周囲の布や家具も、座った姿の広がりを支えている。
作品の見どころ
顔から肩、腕、指先へと順にたどってみたい。腕の曲がり方によって、体の周囲に余白ができている。顔の表情を読む前に、手と腕が作る大きな形を見ると、人物の姿勢をつかみやすい。
黒い衣服にも、ひだや光の違いがある。明るい肌と暗い服、鮮やかな布を比べると、同じ画面の中で材質が描き分けられていることが分かる。鉛筆の肖像とは違う、色と表面の働きを楽しみたい。
制作背景
アングルは1820年、ローマから移ったフィレンツェでルブラン夫妻と知り合った。この1823年の油彩は、夫ジャック=ルイの肖像と対になる作品である。
のちに画家ドガが、1896年に夫妻の肖像を購入した。単独で見る時も、隣に夫の肖像があったことを思い浮かべると、一人を描く絵の外側にある関係へ目が向く。