何が描かれているか
裸のイヴが正面に立ち、後ろのアダムは顔と上半身の一部だけを見せる。下には豹の毛皮と花が置かれる。
聖書の二人を物語の場面でなく、縦に重なる男女の姿として単純化する。正面の明るい身体と、背後の暗い身体の差が大きい。イヴの足先まで続く明るい縦の形に対し、アダムは暗い背景の一部のように後ろへ退いている。
作品の見どころ
イヴの肌と髪は塗り込まれているが、足元やアダムには下描きに近い部分が残る。完成像ではなく、制作の順序を見られる。
細長い画面いっぱいに身体を置き、背景をほとんど消している。黄金様式の模様とは違う晩年の色と線に注目したい。顔や肌の滑らかな塗りと、足元に残る線や薄い色を往復すると、完成前の工程を具体的に追える。
制作背景
1917〜1918年頃の晩年作で、クリムトの死によって未完成のまま残った。未完成部分を意図的な省略と断定しない。
現在はベルヴェデーレ所蔵。完成作と同じように整って見せるのではなく、塗られた部分と途中の部分の差そのものが資料になる。未完成であることは欠点ではなく、どの部分から形と色を決めたのかを考えるための手掛かりになる。