何が描かれているか
花の咲く地面の端で、男性がひざまずく女性を抱き、頬へ口づけする。二人の金色の衣は大きな一つの形にまとまる。
背景には部屋や風景の目印がない。人物の足元だけを現実の地面として残し、抱擁を時間や場所から切り離す。男性の顔はほとんど見えず、女性の閉じた目と片手が感情を受け取る中心として残されている。
作品の見どころ
男性側の四角い模様と、女性側の円や花の模様を比べよう。違うリズムが重なり、二人の姿を見分けさせる。
金色は一色ではない。金箔、銀、プラチナを含む細かな輝きと油彩が、衣、光、背景の境目を変える。二人を囲む金色の輪郭と、足元で途切れる花畑を比べると、現実の地面から浮かび上がるように見える。
制作背景
1908年のウィーン美術展で未完成の状態で初公開され、1909年に完成したとされる。公開時に国が取得し、現在までベルヴェデーレに所蔵される。
アール・ヌーヴォーに連なるウィーン・ユーゲントシュティールと、象徴主義的な主題が交わる作品である。単なる装飾画ではなく、愛と身体の関係を寓意にする。金を多用する時期の代表作だが、材料の豪華さだけでなく、身体と模様を一つにする構成に注目したい。