何が描かれているか
舞台の側から、劇場の観客席を見渡している。いくつもの階に分かれた席が、画面の左右から弧を描いて奥へ続く。中央には大きなシャンデリアが下がり、天井の装飾まで細かく描かれている。
下の席には多くの人が並び、明るい服の女性や黒い服の男性の姿を見分けられる。上階の小さな顔と手前の人物を比べると、広い室内の距離が分かる。舞台上の芝居ではなく、それを見る人々が主役になっている。
作品の見どころ
まず、上階の席の縁を目でたどってみよう。重なる曲線が、建物の奥行きを伝える。手前では扇や衣服、顔の向きが一人ずつ違い、大きな室内が小さな肖像の集まりにも見えてくる。
本作は紙にグアッシュで描かれている。不透明な水彩絵の具を使う技法で、壁の細かな装飾と服の色を同じ画面に収めている。油彩の作品と比べながら、紙の作品でもこれだけの密度を作れることを見てほしい。
制作背景
ウィーン市は、取り壊される旧劇場の内部を記録する仕事をクリムトとフランツ・マッチュに依頼した。マッチュが舞台側を描き、クリムトは観客席を担当した。
所蔵館の記録は1888〜1889年とする。新ブルク劇場の天井装飾画や、本作を後に刷った複製版画とは別の作品だ。