何が描かれているか
女性が子どもの体を抱き寄せ、顔を深く伏せる。二人は画面のほとんどを占め、部屋や周囲の人は見えない。抱擁を温かな日常としてだけ見ることは難しい。題名が示すのは子どもの死であり、女性の腕はもう離せないものをつなぎとめるように見える。まず二つの頭の位置を確かめると、顔が隠れていても、体の重なりから関係が伝わる。
作品の見どころ
細い線とこすったような灰色が、肌と衣服を区別しながら一つの形にする。暗い部分をなぞると、子どもの背と女性の腕の境がところどころ消える。背景を描き込まないため、こちらは出来事の場所より二人の姿勢に向き合う。版画の一枚ごとに色調が違うこともあるが、ここで重要なのは大きく寄せた身体の形である。悲しみを顔つき一つに頼らず伝えた。
制作背景
ケルンの美術館は1903年の作品とし、《農民戦争》連作の準備中に生まれたものの、連作には入れず独立した一枚として発表したと記録する。第一次大戦で息子ペーターを失うより前の制作であるため、その死を直接描いた絵として説明しない。同館は、この試みが《農民戦争》を銅版画で作る判断に結びついたとする。画像はデンマーク国立美術館所蔵の版画である。