何が描かれているか
横たわる男性の前に、人々が列をなして集まる。中央の人物へ身をかがめる人、立ったまま見守る人がいて、別れ方は一つではない。題名の人物は1919年に殺害された政治家カール・リープクネヒトである。彼の顔より、周囲の労働者の表情と手の動きが広く描かれる。最後に横たわる体へ目を戻すと、集団の悲しみが一人の死に結びついていると分かる。
作品の見どころ
木版画は木の版を彫り、残した面にインクをつけて刷る。ここでは黒が人物の衣服や背景を一体にし、白い顔と手だけが浮かび上がる。画面下の文字には死者への追悼が記され、作品の一部になっている。細い陰影を重ねた初期の銅版画と比べると、黒白の大きな対比が強い。人物が大勢いても視線は中央へ集まり、誰か一人を英雄として持ち上げる構図ではない。
制作背景
シュテーデル美術館は1920年の木版画と記録する。同館は、コルヴィッツがリープクネヒトの政治的立場を全面支持した作品と理解するのは誤りだと説明する。反戦の姿勢を評価しつつ、主として共同の悲しみを描いたという。1919年には別の技法で試作し、版を重ねてこの構図に至った。掲載画像は同館所蔵の一枚で、紙の下端の文字も含む。