何が描かれているか
暗い室内に大人と子どもが集まる。手前の小さな顔が白く、奥の大人たちは影に沈む。題名は《失業》。仕事を失った人を一人だけ描くのでなく、その家族が同じ場所で困難を受ける様子にした。顔から顔へ順に視線を移すと、部屋の中に声を掛け合う余裕のなさが伝わる。どの人物が何を考えるか決めつけず、近さと沈黙を見ていたい。
作品の見どころ
木版画の黒は、部屋の壁と服をつなげ、人物の体を閉じ込める。白い顔と手は少なく、暗い面の中から探すように現れる。線を増やすより黒い形を残したため、表情を読む前に部屋全体の重さが届く。紙の余白を含む実物の印象も重要で、作品外の白を透過して黒い版面だけ浮かせることはしない。印刷面の周囲の紙があるから、暗さの密度が際立つ。
制作背景
クリーブランド美術館は1925年の木版画で、《プロレタリアート》連作の第1図と記録する。コルヴィッツは医師だった夫カールの診療所の近くで、ベルリンの労働者の暮らしに接した。制作背景は所蔵館とケルンの美術館の略歴で確かめられるが、この家族を実在の患者の肖像とは断定しない。掲載画像はクリーブランド美術館のCC0公開画像である。