何が描かれているか
年配の女性が鎌の刃を研いでいる。顔を伏せ、両手で道具を持つ姿は、畑仕事の一場面にも見える。しかし題名が属する《農民戦争》の中では、刃を整える時間が抵抗の前触れになる。鎌の先から女性の腕、低く落ちた顔へ視線を移すと、動作の静かさの中に力がたまっている。後ろの物を増やさず、ほぼ半身だけで一つの決意を見せた。
作品の見どころ
顔には深い線が刻まれ、目は狭い影の中にある。道具の斜めの線と曲がる背中が交わる所に、画面の重さが集まる。エッチングなどの銅版技法で、表面のこすれや濃淡まで紙へ写した。鎌は大きな白い輪郭で現れるため、人物の表情より先に道具を見つけるかもしれない。近づいてから顔を見ると、単なる農作業の記録とは違う緊張が伝わる。
制作背景
ケルンの美術館は連作第3図の完成版を1908年とし、制作の途中で全身像から頭・腕・胴に絞ったと説明する。掲載するクリーブランド美術館の所蔵版は1905年の作と記録される。したがって、この版を1908年完成の最終状態と同一視しない。連作の準備から完成までに構図を絞り込んだ過程を知る一枚として見られる。