何が描かれているか
女性が横たわり、腕の近くに小さな体が重なる。上体は力を失ったように見え、顔は白い地面側へ傾く。題名は《寡婦Ⅱ》。戦場にいない人にも戦争が残す苦しみを、静かな体の形で示した。女性の顔から右へ視線を移すと、体が画面の横幅いっぱいに伸びる。人物の状態を医学的に断定する説明より、起き上がれないような姿勢と周囲の暗さを見ていたい。
作品の見どころ
黒い上部と白い下部の境に、人物が横たわる。木版画の太い線は衣服や腕を省略しながら、顔と手の位置を残した。背景は室内とも屋外とも決めにくく、具体的な場所より体の重さが前に出る。連作の《両親》が二人で一つの塊になるのに対し、この図は横長の画面に一人の孤立を広げる。近くで細部を見ると、小さな体との関係も単純には片づけられない。
制作背景
《戦争》第5図で、ケルンの美術館は1922年作の木版画とする。前後には《寡婦Ⅰ》と《母たち》が置かれ、残された女性や子どもへ主題が移る。シュテーデル美術館の所蔵版は連作の一枚で、紙面と刷りの全体を掲載した。特定の一人の戦争体験を記録した肖像としてではなく、戦争後に生きる人の姿を凝縮した表現として読む。出版は1923年である。