何が描かれているか
暗い部屋で、母親が寝台の子どもを見つめている。奥には乳児を抱く別の女性も見える。題名の「貧困」は、部屋の狭さだけでなく、病む子を前に何もできない時間を指すようだ。手前の子の顔は白く、周りの大人の体は影に沈む。最初に子どもの位置を探し、次に二人の母親を見比べると、この部屋で起きていることが分かる。
作品の見どころ
石版に描いた線を紙へ刷るリトグラフで、黒い部分にも薄い灰色が残る。部屋の道具や衣服の輪郭をすべてはっきり描かず、子どもの顔へ光を集めた。紙の広い余白に比べて絵は小さいが、室内の息苦しさは強い。離れて見ると黒い塊が先に届き、近づくと大人の身振りが現れる。子どもの周りを囲む姿勢が、声のない訴えになっている。
制作背景
これは六枚からなる《織工の蜂起》の第1図である。ケルンのコルヴィッツ美術館は、次の「死」とともに反乱へ至る生活の困窮を示す導入だと説明する。ゲルハルト・ハウプトマンの戯曲から着想を得たが、その挿絵や1844年の蜂起の忠実な再現ではない。現代の労働者の服装を描き、画家の時代にも続く問題として示した。掲載画像はデンマーク国立美術館所蔵の一枚である。