背景の真っ黒は、レオナルドが塗ったものではない。19世紀に塗り替えられている。もとは光でぼかされていて、人物は薄暗がりからそっと浮かび上がって見えた。いま目にしているのとは、かなり印象の違う絵だったことになる。描かれているのは16歳か17歳。体をひねって画面の外の誰かを見ており、その姿勢だけで動きが生まれている。
何が描かれているか
白い小動物を抱いた若い女性が、体をひねって画面の外を見ている。動物は白貂。イタチの仲間で、冬に毛が白くなる。
描かれているのは16歳か17歳の姿である。顔は横顔でも正面でもない。クラクフ国立美術館は、彼女が画面の外にいる誰かを見ているために体がわずかにひねられ、そこから動きが生まれていると説明する。
作品の見どころ
白貂に、意味がいくつも重なっている。純潔の象徴であること。この絵を注文したミラノ公が1488年にナポリ王から白貂の勲章を受け、「白い貂」と呼ばれていたこと。描かれた女性の姓が、ギリシャ語の貂に似ていること。そして美術館はもう一つ挙げる。この時すでに彼女が公の子を身ごもっていた可能性を指しているのかもしれない、と。
動物1匹に、道徳と、注文主と、モデルの名前と、二人の関係が畳み込まれている。知らなくても絵は成立するが、知ると幾重にも読める。
制作背景
描かれているのはチェチーリア・ガッレラーニ(1473年頃–1536年)。美術館が挙げるのは容姿だけではない。同時代の人は彼女を「学識ある女性」と呼び、古代のアスパシアやサッフォーに並べた。彼女自身が詩人で、「イタリア語の光」とまで言われている。その詩は、1篇も残っていない。
ミラノ公の愛人だったのは1489年から1491年まで。1491年に公の子を産み、チェーザレと名づけた。ところが同じ年の1月、公はベアトリーチェ・デステという貴族の娘と結婚する。チェチーリアと息子は宮廷を追われた。彼女は後にベルガミーノ伯と結婚し、その邸に移っている。