何が描かれているか
イエスが「この中に私を裏切る者がいる」と言った、その直後。12人の弟子が一斉に動揺している場面だ。
中央のイエスだけが静止し、弟子たちは3人ずつ4組に分かれて動揺する。ペテロはナイフを持ってヨハネへ身を寄せ、トマスは指を上げ、フィリポは両手を胸に当てる。それぞれ異なる反応が同時に進む。
作品の見どころ
レオナルドが一生をかけて追いかけた「心の動き」が、ここで頂点に達している。怒り・恐れ・驚き・悲しみが、12人の顔と手だけで描き分けられている。誰も台詞を持たないのに、誰が何を感じているか分かる。
部屋そのものが仕掛けになっている。絵の中の壁と天井の線をたどると、消失点(遠近法で線が集まる一点)がイエスの右のこめかみに来る。しかもその高さは床から4メートル。食堂に立った人の目線が、そのままイエスの顔に吸い寄せられる。
制作背景
ミラノの支配者スフォルツァの依頼で、43歳頃から修道院の食堂壁に描いた。レオナルドは、乾く前に素早く描くフレスコではなく、乾いた下地へ顔料を重ねる方法を選び、時間をかけて表情や光を調整した。
おかげでゆっくり描けたし、光の効果も出せた。だが絵の具は壁に染み込まず、上に乗っているだけだった。剥がれ始めるのは早かった。以後この壁画は、傷んでは手を入れられることを繰り返してきた。