卓を囲む若者の視線が手札へ向く間に、左端の男は背後からダイヤのエースを取り出す。
何が描かれているか
卓を囲む若者の視線が手札へ向く間に、左端の男は背後からダイヤのエースを取り出す。中央の女性と給仕の女性は互いに合図を送り、客の知らないところで事が進む。手品のような大きな動きはない。指先、目線、体の向きだけで、誰が何を知っているかが少しずつ分かる。画面の人物に順番をつけて眺めると、沈黙の中の駆け引きが見えてくる。
作品の見どころ
衣装の白い布と鮮やかな赤が暗い背景から浮き、四人の距離をはっきり分ける。いかさま師は絵を見る側へ顔を向け、隠し札をあえて見せている。鑑賞者は若い客より先に事態を知るため、その無防備さに気づく。キンベル美術館にあるクラブのエース版と比べると、同じ配置に見えても衣服や物の色、カードの種類が違う。
制作背景
ルーヴル美術館は1636~40年頃とし、画中の署名も記録している。同館の調査は二つの版を区別し、この作品をダイヤのエース版として整理する。遊戯を描く風俗画であると同時に、油断と欲望をめぐる教訓としても読まれてきた。ただし、若い客のその後を描いた続きの場面は存在せず、画面の内側に見える証拠から物語をたどる作品である。
出典・画像について
画像:Georges de La Tour《ダイヤのエースを持ついかさま師》/Wikimedia Commons / Public Domain Mark
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