髪を整える腕と、後ろから見た背中。限られた色と線で、私的な身支度の姿を伝える版画です。
何が描かれているか
女性が後ろ向きになり、片腕を頭の方へ上げて髪を整えています。赤茶色の長い髪が肩へ垂れ、背中の明るい面の下に暗い衣服が重なっています。周囲は褐色の調子にまとめられ、細い線で室内が示されています。顔を描いた肖像とは違い、腕の曲がり、髪、肩、背中から、その場の小さな動きを読み取る画面になっています。
作品の見どころ
上げた腕の線を、頭から背中へとたどってみてください。体の一部が重なることで、肩や腕の位置が分かります。明暗の差は強すぎず、髪と衣服の暗い部分が、薄い体の形を支えています。色鮮やかな舞台広告と見比べると、ここでは少ない色の中で線の役割が大きくなっています。
制作背景
1896年、娼館の女性たちの日常を扱った連作《彼女たち》の一枚です。所蔵館は、ペレが刊行した版画集の一部として記録しています。女性の名前や、画家が見た特定の日までは、この図から確定できません。表情を中心にせず、ありふれた身支度を描くところに目を向けると、舞台で見られる人だけでなく、他人に見せる準備をしている時間にも向けられた観察が伝わります。
出典・画像について
画像:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《彼女たち――髪をとかす女》/The Cleveland Museum of Art
Cleveland Museum of ArtがCC0で公開した図版。全景を保ちWebPへ縮小。 初期表示は図柄全体。周囲の紙を含む採用図版全体へも切替可能。図柄は切らず、表示だけで外周の余白を減らす。
間違いを見つけたら、教えてください →アフィリエイトリンク|このリンクから購入されると、運営者に報酬が入ることがあります。
この画家について本で読む
「不在」トゥールーズ=ロートレック
三菱一号館美術館 著・編・監修/安井裕雄 監修/小林エリカ 著 / 青幻舎
ロートレックが手元に残した作品群を軸に、世紀末パリと女性たちへのまなざしを136点の図版でたどれる一冊です。
楽天ブックスで見る →