四頭の馬が駆ける初期の油彩。後年のポスターとは異なる、動きの観察から出発したロートレックを見られます。
何が描かれているか
四頭の馬が並んで馬車を引き、こちらに向かって斜めに駆けてきます。御者席に座る男性は、一般に画家の父アルフォンスと考えられています。赤と黒の馬車、手綱、馬の脚が入り組み、車体の後ろにはもう一人の姿もあります。背景の木々は細部をくっきり描くより、明るい緑や黄の筆跡でまとめられています。
作品の見どころ
まず、馬の頭から脚へ続く斜めの流れを追ってみてください。四頭は同じ向きを向きながら、頭の高さや脚の開きが少しずつ違います。黒や茶の馬体に白い光が入り、赤い馬車がその奥で目を引きます。輪郭を大きな色面に整理する後年のポスターと比べると、ここでは細かな筆触と明暗が、走る姿の勢いを支えていることが分かります。
制作背景
画中の記年は「ニース、1880年」です。1864年生まれのロートレックが十代半ばに制作した作品で、馬を得意とした画家ルネ・プランストーの指導を受けた初期に当たります。夜のパリだけが彼の主題だったわけではありません。後年の競馬の版画と並べると、若い頃からの馬への関心と、動きを捉える方法の変化をたどれます。
出典・画像について
画像:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《ニース、プロムナード・デ・ザングレの思い出》/The Yorck Project / Wikimedia Commons
Commons個別ファイルのPublic domain表示を確認した平面作品の複製。全景を保ちWebPへ縮小。国・地域によって扱いが異なります。 Yorck Project由来の2005年アップロード版を採用。
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この画家について本で読む
「不在」トゥールーズ=ロートレック
三菱一号館美術館 著・編・監修/安井裕雄 監修/小林エリカ 著 / 青幻舎
ロートレックが手元に残した作品群を軸に、世紀末パリと女性たちへのまなざしを136点の図版でたどれる一冊です。
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