顔を描かず、長い黒手袋で歌手を伝える表紙。人物の特徴が、文字と並ぶ目印になっています。
何が描かれているか
画面には大きな名前の文字と、長い黒手袋をはめた両腕が描かれています。腕は折れ曲がり、指先が横へ伸びていますが、顔や体の全体はありません。主題は歌手イヴェット・ギルベールです。下の文字はギュスターヴ・ジェフロワの文章と、ロートレックの図版を示しています。
作品の見どころ
手袋の輪郭だけを追ってみてください。腕の曲がり方や指先の向きに、細かな表情のような変化があります。人物の顔を省いても、特徴的な装いがあれば誰かを伝えられることが、この表紙の面白さです。名前の文字も画面を組み立てる形です。《ディヴァン・ジャポネ》の舞台に見える黒手袋と見比べると、同じ目印が働くことに気づきます。
制作背景
1894年に制作された、ギルベールを扱うフランス版連作の表紙です。顔を見せない表紙にも、人物の特徴が生かされています。ギルベールは、歌うことと話すことを交えた舞台で知られ、長い黒手袋が特徴でした。ロートレックは彼女を繰り返し描きましたが、ここでは似顔絵を大きく載せる方法を選んでいません。少ない形で人物を伝える、版画と装丁の工夫が見られます。
出典・画像について
画像:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《イヴェット・ギルベール(フランス版連作の表紙)》/The Cleveland Museum of Art
Cleveland Museum of ArtがCC0で公開した図版。全景を保ちWebPへ縮小。
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この画家について本で読む
「不在」トゥールーズ=ロートレック
三菱一号館美術館 著・編・監修/安井裕雄 監修/小林エリカ 著 / 青幻舎
ロートレックが手元に残した作品群を軸に、世紀末パリと女性たちへのまなざしを136点の図版でたどれる一冊です。
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