何が描かれているか
左の部屋で大天使ガブリエルがひざまずき、右では聖母マリアが青い衣を胸元へ寄せて立つ。上から鳩が光を放ち、その線が中央の仕切りの裏を通ってマリアへ届く。
二つの部屋は床でつながるが、柱または窓枠のような垂直の壁で分かれる。マリアの側には本、花器、長椅子が置かれ、受胎告知が同時代の静かな室内へ移されている。
作品の見どころ
中央の仕切りは二人を遮るように見えるが、光だけがそれを越える。見える空間と見えない出来事を同じ線で扱い、受胎告知の意味を建築そのものに持たせた。
天使の前は硬い石壁、マリアの側は布や家具のある生活空間である。表面の違いを細かく描き分けることで、外から届く知らせと内側で受け止める反応が対照になる。
制作背景
ナショナル・ギャラリー(ワシントン)はテンペラ、板の作品として所蔵する。制作年には幅があるため1440年代後半頃とし、同時期の扉上画との関係は可能性として扱う。
リッピは受胎告知を繰り返し描いたが、各作品で建築、光、聖母の姿勢を変えた。本作では人物を近づけるより、隔てられた空間を光が結ぶ仕組みに重点がある。