何が描かれているか
祭壇の奥にある半円形の壁と丸い天井に、聖母マリアの生涯が広がる。上部は天使や聖人を伴う聖母戴冠、下の左は受胎告知、中央は聖母の死、右はキリスト降誕である。
中央の聖母の死の場面では、寝台の上方に天へ上がる聖母の姿が見える。別々の出来事は、描かれた柱によって区切られる。
作品の見どころ
上の戴冠に集まる人物の曲線と、下の壁の縦の区切りを見比べたい。平らな板絵と違い、建物の曲がる面が絵の範囲を決める。見る位置によって人物や場面の距離感が変わることも、壁画を読む手がかりになる。
場面を個別に追うだけでなく、中央から左右、さらに上へ視線を移すと、聖母の物語が教会の中を包む構成が分かる。
制作背景
1466年に注文や材料代の支払いがあり、足場を用いた本格的な作業は1467年から進んだ。リッピは1469年10月に亡くなり、同年12月に協力者たちが連作を完成したと制作記録は伝える。
プラート教区の資料はフラ・ディアマンテを主要な協力者とし、息子フィリッピーノへの支払いも記す。最晩年の構想を伝える作品だが、すべてが本人の筆ではない。父の仕事が工房へ引き継がれた過程も含めて見たい。