何が描かれているか
玉座に座る聖母マリアが幼子キリストを胸に抱き、二人が顔を寄せ合う。幼子の腕は母の首へ回り、聖母の手は背と身体を支える。大きな身体の重みと、身近な触れ合いが並ぶ。
奥には赤い寝台や開いた戸口が見え、左の窓からも外の空間がのぞく。聖なる母子の像が、家具のある生活の部屋に置かれている。衣の広がる膝の下には、1437年を示す年記の札がある。
作品の見どころ
まず、聖母の衣の明るい部分から暗いひだへ目を移したい。重なる布の厚みが座る身体を形づくり、幼子の丸い手足をいっそう際立たせる。窓や戸口は、母子の背後へ続く奥行きを示す。
硬い玉座の線と、母子の触れ合う曲線は対照的である。威厳のある宗教画の形を保ちながら、近くで見る表情と手の動きが親密さを伝える。
制作背景
文化省の展覧会資料は、枢機卿ジョヴァンニ・ヴィテッレスキの注文で、故郷タルクィニアに向けてフィレンツェで制作されたと説明する。年記が残る本作は、初期リッピの歩みを考える確かな基準となる。
バルベリーニ美術館の研究では、現在の額縁も本作に由来することが確認された。額縁までリッピが設計したという点は可能性として述べられている。母子と室内、外枠の関係を見たい。