何が描かれているか
聖母マリアは高い玉座ではなく、地面に近い低い場所に座り、幼子キリストを抱く。これが「謙譲の聖母」と呼ばれる姿である。周囲には翼のない天使と修道服の聖人が集まる。
天使たちは顔を寄せ、こちらを見たり、隣へ目を向けたりする。幼子も見る人の方へ顔を向ける。人物の背後は金色の背景ではなく青空で、足元には草花が見える。
作品の見どころ
大きく折れる布のひだと、聖母の膝から肩へ積み上がる量感に注目したい。人々は重なりながら半円を描くように並び、薄い記号ではなく、場所を占める身体として見えてくる。
中央の母子の大きさに対し、周りの顔は近くにまとまる。空と地面の範囲が狭いため、視線は遠景へ散らず、一団の表情へ戻る。後年の細い線や華やかな髪飾りとも比べやすい。
制作背景
所蔵館は1429〜1432年の作品とし、リッピが修道士となったフィレンツェのサンタ・マリア・デル・カルミネ教会に由来すると説明する。同じ教会のマザッチョの壁画から学んだ空間と立体感を読み取っている。
原作は板に描かれたが、後に絵の層をカンヴァスへ移された。所蔵館によれば2013年の修復で移し替えに伴う傷みが処置された。現在の支持体だけで制作当初の技法を判断しないことも大切である。