スペイン風の衣装と強い明暗を借りながら、滑らかに仕上げない筆触を前面に出した初期作。古い巨匠から学びつつ、当時のサロンへ新しい表面を持ち込んだ。
何が描かれているか
スペイン風の衣装を着た男性が椅子に座り、左利きのようにギターを構えて歌う。足元には玉ねぎや壺が置かれる。
舞台上の記録ではなく、モデルと小道具を使ってスペインの歌手という役を作った。ギターの長い斜線と手前へ出した脚が交差し、椅子に座る人物へ演奏中の動きを与えている。
作品の見どころ
黒い衣装、白いシャツ、茶色の背景を大きな色のかたまりで比べる。細部を滑らかに隠さない筆の動きが見える。
足を手前へ大きく出す姿勢が、人物を画面の外へ近づける。顔や手だけを細密に仕上げず、服や背景と同じく絵具の跡を残すことで、画面全体の表面が意識される。足元の小物まで視線を下ろすと、暗い背景の人物像に生活感のある低い重心が加わる。
制作背景
1860年作。マネはベラスケスなどスペイン絵画を研究し、その明暗と人物像を現代の制作へ取り入れた。
1861年のサロンで評価され、初期の成功作となった。現在はメトロポリタン美術館所蔵。サロンでの評価は、後の論争的な作品だけでは分からない、若いマネの公的な出発点を示している。
出典・画像について
画像:Édouard Manet《スペインの歌手》/スペインの歌手 — Édouard Manet / Wikimedia Commons
CC0/Open Accessとして提供された画像です。
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この画家について本で読む
エドゥアール・マネを見つめて
エミール・ゾラ 著/林 卓行 監訳/神田 由布子 訳 / 東京書籍
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