何が描かれているか
アダムとエヴァがエデンの門から外へ追われる。頭上の天使が剣を向け、アダムは顔を両手で覆い、エヴァは胸と身体を隠しながら口を開けて嘆く。
背景はほとんど描かれず、二人の裸身と歩く方向が強調される。足元へ斜めに落ちる影によって、身体が抽象的な金地ではなく地面の上にあると分かる。
作品の見どころ
顔を隠すアダムと、顔を上げて叫ぶエヴァは、同じ苦痛を異なる身振りで表す。表情の細部より、曲がった背中、腕、開いた口、重い歩幅が感情を伝える。
左上からの光が身体の凹凸を明確にし、裸身を彫刻のような量として見せる。小さな画面だが、周囲の建築や群衆を省いたため、追放された二人の孤立が強く感じられる。
制作背景
ブランカッチ礼拝堂の壁画群の一部で、1424〜1427年頃に描かれた。向かい側にはマゾリーノの《誘惑》があり、罪を犯す前の静けさと、追放後の苦痛が対比される。
後世に裸体を覆う葉が描き足されたが、20世紀の修復で除去された。現在の見え方には保存修復の歴史も関わるため、「制作当初から全く変化していない画面」とは考えない。