何が描かれているか
暗い服と白い襟を身につけた女性が、体を少し横へ向けてこちらを見ている。背景は落ち着いた褐色で、家具や景色は描かれない。顔と襟、画面の下に置かれた手が、明るく見える。
モデルはルイーズ=アントワネット・フアルダン。シェルブールの図書館で働いた、ミレーの長年の友人フェリックス=ビエナメの妻だ。結婚してまもない姿が描かれ、左手には結婚指輪が見える。
作品の見どころ
まず目線と口元を見てから、白い襟の細かな模様へ目を移してみたい。華やかな色を重ねる代わりに、明るい肌、暗い服、褐色の背景の差が、顔と体の形をはっきりさせている。
指輪のある手は、顔と並んで人物を知る手掛かりになる。手の位置や服の輪郭をたどると、画面の中で目立つ物が少ない分、一つずつの形が落ち着いて見えてくる。豪華な装飾がなくても、肖像は個人を伝えられる。
制作背景
1841年の油彩である。ミレーは農民の生活を描く絵で広く知られる以前、肖像画を描いて生計を立てていた。この作品は、その初期の仕事を知る例になる。
後年の《種まく人》や《落穂拾い》と違い、ここでは一人の顔と手に向き合う。農作業の画家という印象だけでなく、身近な人を描くミレーも見てみたい。