1862年(版の年代)
47〜48歳頃

大きな羊飼いの女(エッチング)

画家 ジャン=フランソワ・ミレー →
The Large Shepherdess / クリーヴランド美術館
色の代わりに、細い線を重ねて服や木陰を描く。羊飼いの暗い姿と、明るい草地の対照を見る版画はんが。

何が描かれているか

手前に立つ女性が頭を下げ、顔を左へ向けている。体を覆う厚い衣は暗く、その下の長い裾は明るい。奥の草地には羊と犬が見え、右には茂みと、それに立て掛けられた杖が描かれている。
女性の背後は密に重なる線で暗く、左の遠景は薄い線で開けている。体の輪郭りんかくはその明暗の境目に立つ。色がなくても、服の重み、草木の密度、遠くまで続く地面の違いを見分けられる。

作品の見どころ

まず衣服の黒い部分と、空の明るい部分を比べてみたい。近づくと、黒さが一様に塗られた面ではなく、細い線を何度も重ねたものだと分かる。線の向きや混み具合が、陰影と質感を作っている。
エッチングは、金属の板に酸で線を刻み、その溝に入れたインクを紙へ移す版画だ。紙に直接描いた素描そびょうとは作り方が違う。一本ずつの線が印刷されて画面になるところに注目したい。

制作背景

所蔵館は1862年のエッチングとして記録する。これは版の年代として扱い、収蔵されたこの紙が刷られた日まで分かったという意味にはしない。
油彩ゆさいの《羊飼いの少女と羊の群れ》と比べると、似た題材を別の画材で表す違いが見えてくる。広い色面の代わりに、線の重なりと紙の白さを使って、人物と風景の距離を描き出す作品だ。

作品情報

材質・技法
エッチング・紙
所蔵
クリーヴランド美術館
目録番号
1918.120(Delteil 18)
位置づけ
油彩の羊飼いと比較する版画の表現
年代について
1862年は所蔵館が記す版の年代。この紙が刷られた日は未確定。

出典・画像について

画像:Jean-François Millet《大きな羊飼いの女(エッチング)》/大きな羊飼いの女(エッチング) — Jean-François Millet / The Cleveland Museum of Art
画像の出典 / CC0 1.0(画像情報:2026-10-08 確認)
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