何が描かれているか
左では男性が片ひざをつき、両腕を伸ばしている。右では女性が小さな子どもを支え、子どもも男性に向けて手を伸ばす。柵や木々に囲まれた家の裏の庭で、両親が子どもの初めの歩みを促す場面だ。
三人の間には、まだ渡っていない地面の空間がある。手を差し伸べる父と、体を支える母、その間に立つ子どもを順に見ると、これから起こる一歩を感じ取りやすい。
作品の見どころ
黒い線や影の上に、薄い緑や青、赤などの色が重なっている。柵の縦の線、木の幹、地面の跡が庭を形作り、その中で人の姿がまとまる。色が一面を覆わず、紙の地の色も残っている。
パステルは、粉状の顔料を棒に固めた画材だ。塗った色が紙の上に柔らかく広がり、黒チョークの線とは違う表情を作る。輪郭を描く線と、所々に置かれた色の関係を見比べたい。
制作背景
所蔵館は1859〜1866年頃の黒チョークとパステルによる作品と記録する。ミレーは1860年代に、農民の生活を描く黒チョーク素描へ色を加えるようになった。
この作品では、畑で働く人だけでなく、家族の小さな出来事へ目が向く。ここで見るのはクリーヴランド美術館所蔵の紙の一枚だ。油彩と混同せず、線と色の重なりを楽しみたい。