この絵について、よく引かれてきたのが16世紀の伝記作者ヴァザーリの記述である。注文したのは夫だったこと、描かれるあいだ音楽家や道化が呼ばれたこと。ところがルーヴル美術館は、そのヴァザーリがこの絵を一度も見ていないと書いている。絵は1516年にフランスへ渡っていた。彼が頼ったのは、伝え聞きの情報だった。
何が描かれているか
フィレンツェの絹商人の妻、リザ・ゲラルディーニ(1479–1542)の肖像。夫の名を取って「ラ・ジョコンダ」とも呼ばれる。
体を斜めに置き、顔だけをこちらへ向ける。右手は左手の上に重なる。ルーヴル美術館は、テラスに座る女性が来訪者に気づき、振り向いて微笑むような近さをこの姿勢が生むと説明する。
作品の見どころ
輪郭線が無い。顔は、影から光へのごく細かい移り変わりだけで作られている。透明な絵の具の層を薄く何度も重ねて境目をぼかす。これがスフマート、イタリア語で「煙のように」という意味の技法だ。
そして微笑がある。ルーヴル美術館は、レオナルドがモデルの内面をこの微笑によって明かそうとしたのだと書く。当時の肖像画は、よそよそしい表情で描くのがふつうだった。同じ微笑は、同じ頃に描かれた聖アンナと洗礼者ヨハネにもある。3枚ともルーヴル美術館にある。
制作背景
1503年頃、51歳の時に描き始めたとされる。16世紀の伝記作者ヴァザーリは、夫フランチェスコの注文で、制作中には音楽家や道化が呼ばれたと記した。ただしヴァザーリ自身はこの絵を見ていない。
レオナルドは絵を注文主へ渡さず、晩年にフランスへ持参した。1518年頃にはフランソワ1世の所有となり、1793年からルーヴル美術館で公開されている。