何が描かれているか
広間に立つサロメの前に、光を帯びた洗礼者ヨハネの首が宙に現れる。奥にはヘロデ王らが座り、現実の宮殿と幻のような像が一つの空間に重なる。サロメは腕を伸ばしているが、出現を指しているのか、それに立ちすくんでいるのか、ひとつには決められない。物語の出来事を説明する以上に、目に見えないものが突然姿を取る不安を描く。
作品の見どころ
暗い背景に首の周りの光が強く映え、まずそこへ視線が引き寄せられる。次にサロメの腕や衣装の細部を追うと、床と壁を覆う複雑な文様に気づく。水彩の透明な部分と濃く重ねた部分が交錯し、幻と建物の境をあいまいにする。人物の数や装飾の多さに圧倒されたら、サロメと首の間の空間だけを見てみたい。
制作背景
オルセー美術館は本作を1876年の水彩画として記録する。モローには同題の油彩画もあるが、ここに載せた画像はオルセー美術館所蔵の水彩版である。《ヘロデ王の前で踊るサロメ》と同じ題材を扱いながら、踊りの披露ではなく、その後に現れる幻視へ焦点を移した。題名が指す「出現」を何の確定した説明に還元せず、画面での見え方を確かめたい。
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この画家について本で読む
ギュスターヴ・モロー 〈自作を語る画文集〉夢を集める人
ギュスターヴ・モロー 画・文/藤田尊潮 訳編 / 八坂書房
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