何が描かれているか
巻いた長い髪の女性が横顔を見せ、片手に煙草を持つ。白い煙は髪の曲線へ溶け込み、背後の大きな「JOB」の文字は一部が隠れていても商品名として読める。
女性の体は画面下で切れ、髪と装飾が上部を満たす。写実的な部屋や街は描かれず、顔、髪、煙、文字の四つが広告の内容を直接つくっている。
作品の見どころ
髪の太い輪郭、細い煙、反復する背景模様を比べると、異なる線の速度が感じられる。女性の閉じた目とゆるい手つきは、商品の説明よりも、くつろぎや官能の印象を先に届ける。
最初に顔を見てから、煙と髪をたどって大文字へ戻ると、人物と商品名が離れていないことが分かる。文字を絵の外側へ置かず、装飾の骨格として使う点がこのポスターの強さである。
制作背景
1896年、巻煙草用紙のブランド「ジョブ」の広告として制作された多色石版画である。商品そのものを大きく並べるのではなく、煙草を手にする女性の姿から使用時の雰囲気を作った。
19世紀末のパリでは、多色石版印刷によるポスターが街路と室内の双方へ広がった。本作は商業広告だが、独立した装飾画としても収集され、広告と美術の境界を近づけた作品である。
アフィリエイトリンク|このリンクから購入されると、運営者に報酬が入ることがあります。
この画家について本で読む
ミュシャのすべて
堺 アルフォンス・ミュシャ館(堺市立文化館) 著 / KADOKAWA
商業ポスターから《スラヴ叙事詩》全20点まで、ミュシャの二つの仕事を180点の作品でたどれる入門書です。
楽天ブックスで見る →